
UNSMART HOME — スマートホームを普通のドアホンにするまでの長い道のり
最新のドアホンなのに、呼鈴が聞こえない
我が家にはGoogleのスマートドアホン「Nest Doorbell」が2台設置されている。
スマートフォンはGoogle Pixel。管理アプリはGoogle Home。
つまり、Google製品で統一された、いわゆるスマートホーム環境である。
カメラで玄関を確認できるし、人物の検知もできる。外出先でも来客を確認できるし、スマートフォンから応答することもできる。
なかなか便利な時代になったものだ。
ところが、以前から一つだけ大きな不満があった。
来客が呼鈴を押しても、スマートフォンから「ピョコッ♪」という小さな通知音が鳴るだけなのである。
メールが届いたのか、何かのアプリが通知したのか、それとも玄関に人が来たのか。
そんなもの、音だけでは分からない。
そもそもドアホンの呼鈴というのは、家の中にいる人に来客を知らせるためのものだ。
それが「ピョコッ」で終わってしまっては困る。
宅配便の配達員なら、こちらが気づく前に帰ってしまうかもしれない。
最新のAI技術で人物を認識できるのに、肝心の呼鈴が聞こえない。
何とも不思議な話である。
Google Homeで通知音を変更しようとしたが……
最初は簡単に考えていた。
Pixelの設定から、Google Homeの通知音を変更すればいいだけだろう。
ところが、設定画面を探しても、期待していたような通知音の変更項目が見つからない。
Androidにはアプリごとの通知チャンネルという仕組みがあり、通知の種類によって音を変更できる場合がある。
しかし、少なくとも今回の私の環境では、Google Homeのドアホン通知を希望する着信音に変更することができなかった。
GoogleがPixelもNest DoorbellもGoogle Homeも作っているのだから、この程度の設定は簡単にできそうなものだが……。
そこで、AIに相談してみることにした。
MacroDroidというアプリを使ってみる
AIから提案されたのが、Androidの自動化アプリ「MacroDroid」だった。
このアプリは、何かの出来事をきっかけに、あらかじめ指定した動作を自動実行する仕組みを作れる。
例えば、
「Google Homeから通知が届いたら、指定した音を再生する」
という設定が可能だ。
無料版でも試せるということで、さっそくインストールした。
ただし、ここで新たな問題が発生した。
無料版の広告が、なかなかうるさいのである。
通知音がうるさくないから困っているのに、設定アプリの広告はうるさい。
世の中、なかなか思いどおりにはいかない。
せっかくだから昔のNokiaの着信音にしよう
MacroDroidでは、指定した音声ファイルを再生できる。
ならば、せっかくなので普通の呼鈴ではなく、昔の携帯電話の着信音を使ってみよう。
そこで思いついたのが、1990年代のNokiaの着信音である。
あの独特の電子音。
当時の携帯電話を知っている人なら、聴いただけで懐かしくなるはずだ。
最初はNokiaの着信音アプリをインストールしてみたが、MacroDroidで使いたい音声ファイルをうまく指定できなかった。
結局、MP3ファイルを直接用意することにした。
これをMacroDroidの再生音に指定する。
すると……
鳴った!
しかも、爆音で。
そして、止まらない。
今度は「呼鈴が聞こえない」という問題が、「呼鈴がうるさすぎて止まらない」という問題に変わってしまった。
Google Homeを開いたら着信音を停止させる
そこで、もう一つマクロを作ることにした。
考え方は簡単だ。
Google Homeからドアホン通知が届いたら、Nokiaの着信音を再生する。
そして、通知をタップしてGoogle Homeを開いたら、再生を停止する。
MacroDroidで、次の2つのマクロを作成した。
マクロ①:ドアホン着信
- トリガー:Google Homeの通知を受信
- アクション:Nokia着信音のMP3を再生
- オーディオストリーム:メディア/音楽
マクロ②:ドアホン着信停止
- トリガー:Google Homeアプリが起動・前面表示されたとき
- アクション:MacroDroidで再生中のサウンドを停止
これで実際に試してみたところ、期待どおりに動作した。
ドアホンを押すとNokiaの着信音が鳴り、Google Homeを開くと止まる。
ようやく普通のドアホンらしくなった。
なお、Google Homeを開いたことを検知しているのであって、通知そのもののタップを直接判定しているわけではない。
また、万が一停止処理が動作しなかった場合に備え、一定時間後に自動停止する処理を追加しておくと、さらに安心だろう。
今度は玄関を人が横切るだけでNokiaが鳴る
これで完成かと思ったが、また問題が発生した。
我が家のNest Doorbellは、呼鈴だけでなく人物の動きも検知する。
そして、Google Homeから届く通知には、呼鈴でも人物検知でも、ドアホンの名前が含まれていた。
MacroDroidでは、そのドアホン名を含む通知を検知するように設定していた。
つまり……
玄関を人が横切るだけで、Nokiaの着信音が鳴り響くのである。
さらに我が家にはドアホンが2台ある。
時間差で通知が届くこともあり、一度音を止めても、また鳴り始める。
まるで誰かが何度も電話をかけてきているような状態になった。
さすがにこれは困る。
そこで、Google Home側の通知設定を見直し、人物検知などの通知を無効にして、呼鈴が押されたときだけ通知するように変更した。
すると、問題はほぼ解決した。
最初からこうしておけばよかったのかもしれない。
ただし、人物検知の通知を無効にすると、その通知は受け取れなくなる。防犯目的で利用している場合は、通知内容を細かく判定する方法を検討した方がよいだろう。
なお、通知を止める設定と、人物などの検知・録画に関わるイベント設定は別のものだ。Google公式ヘルプの通知設定も確認し、通知だけを止めたい場合はイベント自体を無効にしないよう注意したい。
実際に設定する方法
ここからは、今回動作した設定の概要を紹介する。
使用したのは、Google Nest Doorbell、Google Pixel、Google Home、MacroDroidである。
AndroidやGoogle Homeのバージョンによって、表示されるメニューや動作は異なる場合がある。
1. MacroDroidをインストール
Google PlayからMacroDroidをインストールする。
無料版でも基本的な自動化を試すことができる。Google Playの公式説明では、無料版は広告付きで、作成できるマクロは最大5個となっている。
通知を検知するため、Androidの設定でMacroDroidに「通知へのアクセス」を許可する。
この権限を与えると、MacroDroidはほかのアプリの通知内容にもアクセスできるため、その点を理解したうえで設定する。ただし、Androidのバージョンや通知の内容によって読み取りが制限される場合があり、すべての通知を読めるわけではない。
2. 通知を受け取るマクロを作成
新しいマクロを追加し、トリガーに「通知が表示された時」を選ぶ。仕組みはMacroDroid公式Wikiの通知トリガーに説明されている。
対象アプリをGoogle Homeに指定する。
必要に応じて、通知に含まれる文字列で条件を絞る。
ただし、ドアホン名だけで判定すると、人物検知などの通知にも反応する可能性がある。
3. MP3を再生するアクションを追加
アクションで「サウンドを再生」を選ぶ。
「ファイルを選ぶ」から、スマートフォンに保存したMP3を指定する。
オーディオストリームは、今回の環境では「メディア/音楽」で動作した。
音量が小さい場合は、Pixel側のメディア音量を確認する。
なお、MacroDroidで音量を変更する場合は、再生後に元の音量へ戻す処理も検討したい。
4. 音を停止するマクロを追加
もう一つマクロを作成する。
トリガーに「アプリを起動時」を選び、対象アプリをGoogle Homeに指定する。
このアプリの前面表示を検知するトリガーは、通常はユーザー補助サービスを利用する。旧方式の「Force legacy mode」では使用状況へのアクセス権限が必要になるため、選んだ方式の案内と権限の範囲を確認する。
アクションは「サウンドを停止」。
これで、Google Homeを開いたときに、MacroDroidの再生音を停止する構成になる。
5. 実際に呼鈴を押して確認
最後に、実際にドアホンを押して動作を確認する。
- 呼鈴を押すと指定したMP3が鳴るか
- Google Homeを開くと停止するか
- 人物検知などの不要な通知では鳴らないか
- スマートフォンの画面を消した状態でも動作するか
特に最後の項目は重要だ。
Androidの省電力設定などによって、バックグラウンド動作が制限される場合もある。Pixelのバッテリー設定に関する公式ヘルプも参考に、画面を消した状態での動作を確認したい。
今回の設定はGoogle Homeの通知に依存しているため、将来のアプリ更新によって動作が変わる可能性もある。
スマートホームって何だろう?
今回の作業で、改めて思ったことがある。
スマートホームというのは、便利な機能をたくさん搭載することなのだろうか。
もちろん、カメラで人物を認識したり、外出先から応答できたりするのは便利だ。
しかし、ドアホンに求める最も基本的な機能は、来客があったことを確実に知らせることである。
そのために、別のアプリをインストールし、マクロを組み、MP3を用意し、音量を調整し、通知条件を設定する。
しかも途中で何度も広告を見せられる。
何だか順番が逆ではないだろうか。
Googleのドアホンが悪い製品だと言いたいわけではない。
むしろ高機能で便利だからこそ、こうした基本的な部分も自由に設定できるようにしてほしいのである。
UNSMART HOME — 完成
こうして、我が家のドアホンは無事にNokiaの着信音で来客を知らせるようになった。
玄関に人が来れば、懐かしい電子音が鳴り響く。
Google Homeを開けば、音が止まる。
ようやく、私が求めていたドアホンになった。
もちろん、一般的な家庭ならドアホンは1台だろうから、我が家のような2台分の通知に悩まされることも少ないはずだ。
今回の方法がすべての環境で動作するとは限らないが、同じように通知音が小さくて困っている人には、一つの解決策になると思う。
それにしても、何とも皮肉な話である。
最新のGoogle Nest Doorbell。
最新のGoogle Pixel。
そして、AIに相談しながら構築した自動化システム。
そこまで揃えて、最終的に鳴らしているのは1990年代のNokiaの着信音だ。
スマートホームを導入したら、スマートじゃない部分を自分でプログラムする羽目になった。
これぞ、我が家の
UNSMART HOME。
便利になったのか、面倒になったのか。それは今でもよく分からない。
※本記事は筆者の実機環境で試した内容です。製品・アプリの仕様や設定画面は更新によって変更される場合があります。MacroDroidはGoogle公式の製品ではありません。


